行政・財政
船橋市はふるさと納税でいくら「損」している?令和6年度は21.35億円の減収
2026-07-31
「ふるさと納税」は、応援したい自治体に寄附をすると、住んでいる自治体の税金が控除される制度です。返礼品がお得という側面ばかりが注目されがちですが、実は都市部の自治体にとっては税収が流出する仕組みでもあります。船橋市の場合、実際にどれくらいの影響が出ているのか、市が公表している数字と、総務省の全国調査を突き合わせて確認してみます。
令和6年度は21.35億円の減収
船橋市の公式サイトによると、令和6年度に船橋市が受け取ったふるさと納税の寄附額は9.41億円でした。一方、船橋市民が他の自治体にふるさと納税をしたことによる市民税の控除額は30.76億円にのぼります。差し引きすると、船橋市は令和6年度だけで21.35億円の減収となった計算です。
船橋市のふるさと納税 受入額と控除額(令和6年度、単位:億円)
出典:船橋市公式サイト「ふるさと納税額と市民税控除額の推移」
累計では72.5億円の減収に
この減収は令和6年度に限った話ではありません。平成26年度から令和6年度までの累計減収額は72.5億円にのぼると公表されています。ふるさと納税制度が本格的に広がって以降、船橋市は一貫して「受け取る額より出ていく額の方が大きい」状態が続いていることになります。
全国的にも「都市部が流出超過」の構造がある
これは船橋市だけの特殊な事情ではありません。総務省が公表している「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」によると、令和6年度の全国のふるさと納税受入額は約1兆2,728億円、住民税控除額は約8,710億円で、いずれも過去最高を更新しました。都道府県単位で見ると、東京都だけで控除額全国の約25%(約2,161億円)を占めており、受入額より控除額が上回る「流出超過」の都府県は8都府県にとどまる一方、「流入超過」の道県は39道県にのぼります。人口が多く、相対的に所得水準の高い住民が集まる都市部ほど流出超過になりやすいという構造は、船橋市に限らず全国共通の傾向として、総務省の調査からも裏付けられています。
財政規模から見た影響の大きさ
財政ダッシュボードや「船橋市の財政を家計に例えると」の記事で紹介した通り、船橋市の令和6年度決算の歳入総額は約2,493億円です。これと比べると、21.35億円という金額は歳入全体の1%弱にあたります。決して無視できる金額ではありませんが、財政全体を揺るがすほどの規模でもない、というのが実態に近い受け止め方かもしれません。
「減収額の75%は交付税で補填される」という仕組み
なお、ふるさと納税による減収額の75%は、地方交付税を計算する際の基礎となる「基準財政収入額」に算入される仕組みになっています。つまり、減収分の一部は地方交付税というかたちで国から補填される可能性があるということです。ただし、これは船橋市のように地方交付税を受け取っている自治体に当てはまる仕組みであり、減収がまるごと帳消しになるわけではありません。この点は、単純に「21.35億円が丸ごと失われた」と捉えるのではなく、制度の仕組みとあわせて理解しておきたいポイントです。
なぜ都市部の自治体は「流出超過」になりやすいのか
ふるさと納税は、返礼品を用意しやすい農産物・海産物などの特産品を持つ自治体の方が、寄附を集めやすい傾向があります。船橋市のような都市部の自治体は、相対的に人口が多く比較的所得水準の高い住民が多い一方で、返礼品として大きくアピールできる特産品の選択肢が少なく、「寄附する側」に回る住民の方が「寄附を受け取る側」より多くなりやすい、という構造的な事情があります。前述の総務省調査が示す「都市部に控除額が集中する」傾向は、まさにこの構造を裏付けるものです。
船橋市も受け入れを増やす取り組みを実施
船橋市も手をこまねいているわけではありません。市の公式サイトでは、梨をはじめとする地場産品を返礼品として用意しているほか(詳しくは「船橋の梨」の記事)、企業版ふるさと納税(特定の事業を応援する形での企業からの寄附)や、フリマアプリ「メルカリ」の売上金を寄附できる仕組みなど、寄附を受け取るための取り組みも進めています。
出典と、記事の前提について
ここで紹介した船橋市の数字は、船橋市公式サイトで公表されている「ふるさと納税額と市民税控除額の推移」のページに基づくものです。全国の受入額・控除額および流出超過・流入超過の分布は、総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施、2025年7月31日公表)」によるものです。最新年度の数値や、より詳しい推移については、それぞれの公式サイトで直接ご確認いただくことをおすすめします。